紫色のクオリア

毬井ゆかりは自分以外の人間がロボットに見えるという紫色の瞳を持つ。

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

ライトノベルであらすじにこう書かれていればまず主人公はこの毬井ゆかりだと思われる方が大半でしょう。実際、本書に収録されている二つの物語は毬井の友人である波濤マナブが毬井に関連して起きた事件を描写するという体で綴られてます。
早い話がマナブの一人称ですね。
全体の三分の一程度を占める一話は、それでも一応、毬井が活躍するので毬井が主人公と言えなくもないのですが、二話はもう、完全にマナブが主人公です。というか、二話に毬井は出てこないと言い切れるくらい、出てきません。この能力の無駄遣いっぷりがたまりませんね。しかしそれでいて二話の方が圧倒的に面白いのだから不思議。一話から連続している二話なのであまり詳しくは書けませんが、量子力学波動関数について多世界解釈を取り入れて、好き放題やる話です。全ての世界という可能性の塊から自分に都合のいい世界だけ残していくとか素敵すぎる。
ただ、世界の行ったり来たりはいいとしても時間軸の移動はやりすぎのような気も。なんか説明してたかもしれないけれど。
あとやばい点として、特に一話で小林泰三玩具修理者っぷりがひどい。玩具修理者がワンアイデア短編なので、そこのガジェットをそのまま取り入れた一話はラノベ玩具修理者と言っても過言ではないかと。二話も二話で見方によっては酔歩する男だしなあ。
ベスターにしてイーガンとかいう評価を聞いたような気もするけどそれはほめすぎでしょう。そんなことを言っていたら小林泰三山本弘はどうなるのよ、っていう。……っていうか、イーガンはともかくベスターはフォイルに反応しただけだろ。(二話に出てくるキャラの名前がアリス・フォイル。ジョウントという組織に属している)



禾原