三題噺つくりました(Part2)。

前回の三題噺が(部内で)好評だったので、味をしめての第二回です。


今回のお題は「カーニバル」「スカンジナビア」「とんぼ」
北国と南国の組み合わせにみんな苦戦していました。

投票で選ばれたのは、これ。コミカルな文体とストーリーの両立が好評でした。




 『おバカと馬鹿と』
            水無月朔(文学部1年)


僕の手を離れたダーツの矢が、壁に張ってある世界地図に刺さる。スカンジナビア半島に命中。すかさず彼女が地図に近づいて、刺さった矢を抜く。
ノルウェーね」
 旅行先はノルウェーに決定。彼女は笑っていて、彼女が笑えば笑うほど、僕は溜め息。
 だいたいおかしいんですよ。僕はお金がないから国内旅行がいいと言ったのに、彼女は海外に行きたいと言い張って、じゃあゲームで決めようって彼女が言うから、僕はトランプでもするのかと思ったらダーツですよ。「刺さった所に行こうね」なんてかわいらしく彼女は言うけれど、初心者の僕が世界地図の中のちっぽけな日本に命中させるなんて、できるわけがないじゃないですか。確信犯!
 僕は唐突に、小学生の頃飼っていたカマキリのことを思い出す。友達が飼っていて、羨ましくなって、必死に探して捕まえたカマキリ。餌のとんぼを捕まえるために、毎日虫捕り網を振り回さなければならず、むしろ捕まえてからのほうが大変だったカマキリ。あげく、卵を産み、卵がかえり、家中をちっちゃいカマキリだらけにしてくれやがったカマキリ。彼女も同じだ。付き合うまでが大変で、付き合ってからはもっと大変。彼女の贅沢嗜好は、僕の首を絞めつける。釣った魚は大飯食らい。
ノルウェーに行ったら、リオのカーニバルが見たいわ」
 出たよ、出ました。彼女のおバカ発言。僕は頭を抱える。同じ大学に通っていたはずなのに、明らかに問題のある彼女の常識力。もはや合掌。
「……話は変わるんだけど」
 僕は顔を上げて彼女を見る。彼女は自分のおなかのあたりに視線を移して、ぎこちなく笑いながら、「赤ちゃんができたの」と言った。急展開!
 僕は彼女を抱きしめた。大飯食らいでもいい。おバカでもいい。家を赤ちゃんだらけにしなければそれでいい。僕は彼女の為にいくらでもとんぼを捕まえて来よう。そんな馬鹿な事を考えながら、僕は彼女の耳元で、「ブラジルに行こう」ってささやいた。(終わり)








✽ついでにこっそり。
夏の合宿、みよし担当の読書会は中原昌也の『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』に収録されている短編、「あのつとむが死んだ」でやります。(みよしより)

マリ&フィフィの虐殺ソングブック

マリ&フィフィの虐殺ソングブック