書評 『二人がここにいる不思議』レイ・ブラッドベリ

モスクワです。はじめまして。
先日ブラッドベリで読書会やらせてもらいました。
反省点は結構あったのですが、次に生かせるようがんばります。
せっかくなので書評残しときます。
ほんというとブラッドベリって、読んで語りたくなるというよりは、「この本、当たりだったわー」ってひとりでにんまりするような作家なので、どんな風に書こうか困っちゃうんだけどね。

二人がここにいる不思議 (新潮文庫)

二人がここにいる不思議 (新潮文庫)

『二人がここにいる不思議』レイ・ブラッドベリ

くらくらしてしまう様な文章。忙しい人のためのブラッドベリ、といった感がする一冊。米文学のテーマは「アメリカ」を描くことだ、というのをどこかでみた気がする。アイデンティティをめぐる物語をたくされて、キャラクターたちはあちらこちらで小さな、あるいは大きなドラマの目撃者となる。生涯に一度の夜に出会うクローバーの丘も、楽観主義の果ての甘い1984年も、乗り換えで立ち寄ったシカゴの駅も、ある男女の喧噪がもれだす煉瓦色のアパートも、それはアメリカというアイデアである。幻想的でどこかせつないブラッドベリ秘伝のスパイスがふりかけられているせいで、それは理想郷のような味わい。しかし目をつむっているわけではない。土曜の夜に「この前幽霊みてさあ」なんて話をしているクールなおじさん。そんな感じ。


*おまけ*
ブラッドベリは青年時代から今に至るまで、一日に2000字くらいの文章を書く習慣があるらしい。80歳超えた頃はさすがに娘に聞き書きしてもらっていたらしいけども、やはりよい小説を書くためにはとにかく量を書かないとだめらしい。バルガス・リョサも似たようなことを述べてた記憶が。小説を書くことは、肉体を鍛えることに近い行為なのだろう(これでわたしがくされハルキストだということがばれますね)。