幻想研の100冊以降<第15回〜まんが〜>

マンガの2回め。これで130冊。「幻想研の100冊以降」もこれでひとくぎりです。

とはいえ更新は今後も細々と続けていくのでよろしくお願いします。(みよしくにこ)



№128
『訪問者』
萩尾望都 小学館
 表題作は『トーマの心臓』の登場人物オスカーが主役の作品なので、先に『トーマの心臓』を読むことをお勧めします。放浪癖の父親と一緒にいるためにひたむきな少年オスカーの姿がなんともいたたまれません。この話を読んだ後に『トーマの心臓』を読み返すと、大切な人を支えてあげることができずにいるオスカーの苦悩がよりはっきり見えてくると思います。余談ですが萩尾望都はヘッセ全集に寄せた推薦文で「ヘッセは私の源泉」的な発言をしているので、萩尾望都の作品が好きな人はヘッセを読むといいと思います。というより読んで下さい、ヘッセ面白いので。(針原)

訪問者 (小学館文庫)

訪問者 (小学館文庫)


№129
『HAL―はいぱああかでみっくらぼ(1)』
あさりよしとお ワニブックス
あさりよしとおが学研の『科学』に連載していた『まんがサイエンス』は学習まんがの金字塔といってもいい。小学生向けでわかりやすく、そしてぎりぎりアウトなところがよかった。この『HAL』も路線としては大体同じだが対象年齢はほんの少し高め。わかりやすく、そして明らかにアウトなところがいい。水質汚染ドップラー効果、二足歩行ロボットの解説は『まんがサイエンス』の内容を圧縮した感じ。ようするに適当なので『まんがサイエンス』と『るくるく』の両方を知っている人には少し物足りないかもしれない。逆に言えば、あさりよしとおの平均値を知るのにはおすすめ。(みよし)


№130
『チワワちゃん』 
岡崎京子 角川書店
言わずとしれた岡崎京子なのでやはり、寂しくてエロい女の子や小沢賢二まがいの男の子などが沢山でてきます。有名な表題作はもちろん極上なのですが、その他の短編も至極の味わい。90年代の雰囲気を味わいつつ、東京という世界有数の巨大都市に依然として存在する暗やみをのぞくことができます。岡崎はサブカル系評論家によく絶賛されていますが、その理由は読めばなんとなくわかると思います(引用もあちこちに散りばめられているのでしょう。たぶん)。読後はビルの屋上で夜明けを迎えた家出少女のことなんかを考えて微妙にじんとしちゃったり、といった感じです。(モスクワ)

チワワちゃん (単行本コミックス)

チワワちゃん (単行本コミックス)