試作品神話

試作品神話 (角川文庫)

試作品神話 (角川文庫)

敬愛してやまない大塚英志先生と、先生と仲良しの漫画家・西島大介による作品。
たぶんこの二人が作った最初の本は「定本 物語消費論」かと思いますけど、違ってたらすみません。この本は6冊目ぐらいですかね。
何よりも驚くべきはあの先生が漫画家と喧嘩していないということ。

約100ページのうち、実に56ページが無地、残りのページの半分には西島の挿画がたっぷりで、まさに「絵本」というべき本。

登場するのは、成長を拒否する六人の14歳達。14歳達は神様を「発見」し、自分たちを給食のミルクが「つまんない普通の大人」にすることを知り、ミルクタンクを襲撃します。

大江公彦サーガの外部、あるいは上部に位置する作品ではないかと考察。大塚作品に一貫する「過渡期の14歳」というテーマが現れています。特に14歳達の一人、成長そのものを拒否している赤ん坊のような容姿の「ベビー・ディケンズ」というキャラクターの存在がそれを端的に象徴しているのではないかと。
後半の記述なんかは別作品のMADARAを連想するし、リヴァイアサンやサイコにつながる象徴も数多く見受けられます。

その意味でこの作品は、大塚英志という思想家にとっての「神話」の「試作品」であるといえますね。タイトルまんまですけど。

それにしても「英志」は変換しづらいですね、「えいじ」の変換候補の下の方です。間違えないように。
作家別にならんでいる棚で、「大塚英志」と「大下英治」をいつも間違う人は挙手。なるほど、タモリストラップがもらえそうだね。

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