終の住処

ただの酒好きに思われたくはないので本の話もしますよ!
まあ、実際私普段そんなに酒飲む人じゃないですしね。

終の住処

終の住処

ご存知、磯崎憲一郎の終の住処です。
芥川賞受賞作だしこんなものは恐れ多くて扱えないと思っていたのですが、よく考えたら私、出版された磯崎作品には全て目を通してますし、なによりサークル室にあるから別に取り上げてもいいかな、と。
まあ内容はわかりやすい世紀の発見ですよね、っていう磯崎読んでる人じゃないとわからない物言い。
世紀の発見では誰かによって世界は動かされていると主人公が感じていますが(あるいはそれは磯崎作品全般に言えることなのかも。世紀の発見が特に顕著なだけで)、それは茫洋とし、決してつかむことのできないものとして描かれています。
その正体を妻である、としているのがこの終の住処。そこがはっきりとしている分、世紀の発見よりはいくらかわかりやすいかと。
磯崎作品でも屈指の読みやすさですが、それでも読みづらいと感じる人が多いでしょう。なぜなら
1、主人公が常に浮いている印象を受ける。現実世界に生きているはずなのに、どことなく漠としている。また、ときおり妄想のような描写も挿入される。
2、普通なら改行するであろうところで改行が入らない。文章がつらつらと続き、疲れる。
3、登場人物の台詞が訳語調。
3は人によっては評価が高いかもしれませんが、異次元の楽しみ方なので素人にはおすすめできません。
ちなみにこれらは磯崎作品すべてに共通です。初めての方は処女作より終の住処からの方が無難かと。


禾原