幻想研の100冊以降<第5回〜かわいいおじさん〜>

今回からは「かわいいおじさん特集」。なんだそれ?ですって?
つまりは登場人物の中にかわいいおじさんがいるor著者自身がかわいいおじさんである本のレビューです。



№108
『君は他人に鼻毛が出てますよといえるか』
北尾トロ 幻冬舎
 近日「裁判長!ここは懲役4年でどうすか?」で一躍メジャーとなった北尾トロは、希有なパーソナリティーの持ち主である。ダ・ヴィンチで好評連載中の「トロイカ学習帳」の読者であればおわかりのことと思うが、何事に対しても斜めから全力で取り組むのだ。本書はそのようなトロ氏の魅力が詰まっている。河川敷の子供を捕まえて野球を教えたり、お台場に一人でいる男と友達になろうとしたり、30年前好きだった子に今更告白してみたりと、文字通りの体当たり。本書は、飾らない『等身大のおじさん』の生きざまが記された、まさに人生のバイブルである。(84)

キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか デラックス (朝日文庫)

キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか デラックス (朝日文庫)



№109
『母の影』
 北杜夫 新潮社
 歌人斉藤茂吉の息子にして、斉藤茂太の弟、北杜夫。気弱なくせに気むずかしい父。息子にエロ本を与える母。みずみずしい語り口で一家族の年代記が述べられているのだが、北杜夫本人もおちゃめ機能満載である。登山中にイツモンヒラタコメツキを追って逆行したり、飛行機を見に兄と二人で飛行場に忍び込んだり、押し寄せてくる波から砂の城を守ろうと防衛戦を張ったりと、とにかく忙しい。もっとも、これらは子供のころの思い出の回想なのだが、現在の著者に語られているからおじさんの振る舞いように感じられ、愛らしく思えてならない。 (84)   

母の影 (新潮文庫)

母の影 (新潮文庫)



前回も告知した通り、明日、5月12日(木)の16時30分から18時30分にかけて、新入生向けに幻想文学研究会の説明会を行います。
場所は川内北キャンパスC棟2階、206教室です。ミス研・SF研との合同で行うので、話が合う人がきっと見つかると思います。(みよしくにこ)